設計思想と実践の記録
目の前の実践には、いつも「なぜそうするのか」という問いがあります。
Behind the Practiceでは、Civic Weaveが現場で大切にしている設計思想と、実践を通して得た学びを綴ります。
正解を伝えるのではなく、問いを共有する。そんな記事を目指しています。

2026/7/4 02:49
カテゴリー
設計思想

ワークショップを開催すると、こんな報告を目にすることがあります。
「○○名が参加しました。」
「たくさんの意見が集まりました。」
「活発な対話が生まれました。」
どれも間違いなく、その場で起きた価値ある出来事です。私自身も、これまで行政や企業、大学などさまざまな現場でワークショップを企画・運営し、その場に立ち会ってきました。
参加者同士が初めて言葉を交わし、新しい視点に出会い、自分では思いつかなかった考えに触れる。その瞬間に立ち会えることは、この仕事の大きな魅力だと思っています。
だからこそ、ワークショップには大きな可能性があると信じています。
一方で、毎回心のどこかで気になっていることがあります。
その対話は、ワークショップが終わったあとも続いているだろうか。
数か月後、その参加者はもう一度まちに関わっているだろうか。
生まれたアイデアは、誰かの行動につながっているだろうか。
ワークショップ当日の熱量は、とても高い。
でも、その熱量はイベントとともに静かに消えてしまうことも少なくありません。
私は、そこに市民参加や共創の難しさがあると感じています。
【目次】
私は、ワークショップそのものを否定したいわけではありません。
むしろ、これまで数多くの現場で、その価値を何度も目の当たりにしてきました。
初対面だった人たちが、いつの間にか笑い合っている。立場の違う人同士が、お互いの考えに耳を傾ける。普段なら交わることのない視点が出会い、新しい気づきが生まれる。
そんな瞬間に立ち会えることは、ファシリテーターとして何度経験しても嬉しいものです。

だから私は、ワークショップは「変化のきっかけ」をつくる力を持っていると信じています。
ただ、その一方で、こんなことも思うようになりました。
ワークショップは、まちを変えることはできても、ワークショップだけでは、まちは変えられない。
その違いは、とても大きいと思っています。
では、なぜワークショップだけでは、まちは変わらないのでしょうか。
私はその理由を、ワークショップそのものではなく、「その後のプロセス」にあると考えています。
ワークショップは、限られた時間の中で人が集まり、対話し、新しい視点やアイデアに出会う場です。その時間には確かに価値があります。
しかし、イベントには必ず終わりがあります。
会場を片付け、それぞれが日常に戻ると、あの日の熱量は少しずつ薄れていきます。せっかく生まれたアイデアも、誰が次に動くのかが決まっていなければ、そのまま止まってしまうことも少なくありません。
それは、参加者の意欲が足りないからではありません。
人は、きっかけだけでは動き続けられないからです。
だから私は、ワークショップの設計と同じくらい、その後の設計が重要だと考えています。
「次はいつ集まるのか。」
「このアイデアを試せる小さな機会はあるのか。」
「今日出会った人と、もう一度話せる場はあるのか。」
そんな”続き”が用意されてはじめて、対話は行動へ、行動は関係性へと育っていきます。
ワークショップは、まちづくりのゴールではありません。
関わり続ける関係性が始まる、スタートラインなのです。

対話の痕跡は残る。でも、本当に残したいのは、その後も続く関係性です。
以前の私は、ワークショップ当日をどう成功させるかを考えていました。
参加者に満足してもらえるだろうか。
時間配分は適切だろうか。
対話は盛り上がるだろうか。
もちろん、それらは今でも大切です。
でも、現場を重ねるうちに、自分の問いが少しずつ変わっていきました。
今、私が最初に考えるのは、
「この場が終わったあと、何が始まるだろう。」
ということです。
参加者同士が、もう一度会いたいと思えるだろうか。
「今度、一緒にやってみませんか。」という会話が生まれるだろうか。
今日出たアイデアを、小さくても実際に試してみようと思える人はいるだろうか。
ワークショップの価値は、その日の拍手やアンケートだけでは測れません。
数か月後に、「あの日がきっかけでした。」と言ってくれる人がいること。
以前は知らなかった人同士が、一緒に活動していること。
地域のイベントを一緒につくったり、小さな実践を始めたりすること。
そんな変化が生まれたとき、初めてワークショップは”まちづくりのプロセス”になったのだと感じます。

ワークショップで出会った人たちが、その後も地域の活動で関わり続ける。私たちが目指しているのは、そんな「点ではなく線」の市民参加です。
ワークショップは、人が出会い、対話し、新しい視点を得るための、とても大切なきっかけです。
しかし、本当に地域を変えていくのは、その日一日のイベントではありません。
「あの人と、また話したい。」
「今度は自分もやってみよう。」
「少しだけ手伝ってみよう。」
そんな小さな一歩が積み重なり、人と人、人と地域との関係が少しずつ育っていくこと。その積み重ねが、まちを変えていくのだと思っています。
だから私は、ワークショップを開催することを目的にはしていません。
参加をデザインするのではなく、関わり続けることをデザインしたい。
それが、実践を重ねる中でたどり着いた、今の私の考えです。
私たちがリビングラボを大切にしているのも、同じ理由です。
私がリビングラボに惹かれているのは、「正解を見つける場」ではなく、「関わり続けながら地域と一緒に育てていく場」だからです。
リビングラボは、単発のイベントや実証実験ではありません。地域の人、行政、企業、大学など、多様な主体が関わり続けながら、試し、学び、育てていくプロセスです。
完成された答えを用意するのではなく、対話と実践を繰り返しながら、地域の未来をともにつくっていく。その考え方に、私は大きな可能性を感じています。

まちは、一度のワークショップでは変わりません。
でも、一度のワークショップが、誰かにとって「関わり続けるきっかけ」になることはできます。
そのきっかけを、地域に根づく関係性へと育てていくこと。
私たちは、イベントをつくりたいのではありません。
地域の中に、「また関わりたい」と思えるきっかけをつくる。
そして、その一歩を、次の一歩へとつないでいく。
それが、Civic Weaveが実践を通して向き合い続けているテーマです。
この記事でご紹介したように、私たちは対話と共創を通じて、多様な主体が関わり続けられる場とプロセスを設計しています。
地域づくりや組織づくりに関するご相談がありましたら、お気軽にお問い合わせください。
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