設計思想と実践の記録
目の前の実践には、いつも「なぜそうするのか」という問いがあります。
Behind the Practiceでは、Civic Weaveが現場で大切にしている設計思想と、実践を通して得た学びを綴ります。
正解を伝えるのではなく、問いを共有する。そんな記事を目指しています。

2026/4/1 13:37
カテゴリー
設計思想
新しい公園をつくるとき、最初に必要なのは設計図だと思われるかもしれません。
どこに広場を配置するのか。どんな遊具を置くのか。どのような動線にするのか。多くの公園づくりでは、まず空間の計画から議論が始まります。
しかし、柏の葉の近隣公園プロジェクトで私たちが最初に行ったのは、公園の設計ではありませんでした。
まずは予定地に人が集まり、焚き火を囲み、コーヒーを飲み、子どもたちが走り回る。そんな時間を実際に過ごしてもらうことから始めました。
なぜなら、私たちは「どんな公園が欲しいか」を考える前に、「この場所でどんな時間を過ごしたいのか」を共有することが大切だと考えたからです。
この記事では、柏の葉・近隣公園プロジェクトを題材に、私たちがどのような考え方で市民参加の場を設計したのか、その舞台裏をご紹介します。
目次

近隣公園の整備予定地。まだ何もない空間だったからこそ、「どんな公園をつくるか」ではなく、「ここでどんな時間を過ごしたいか」を考えるところから始めた。
2025年3月、柏の葉で整備が予定されていた近隣公園の予定地で、プレイベントを開催しました。
会場となったのは、まだ何もない更地です。遊具もベンチもなく、公園としての機能はまだ何ひとつ整備されていませんでした。
それでも当日は約150人が訪れました。
焚き火を囲みながら話をする人。キッチンカーで食事を楽しむ人。子どもたちは広い空間を自由に走り回り、思い思いの過ごし方を見つけていました。
一般的な市民参加の場では、「どんな公園が欲しいですか?」「どんな設備が必要ですか?」という問いから始まることが少なくありません。
しかし私たちは、その前に確かめたいことがありました。
それは、この場所が人々にとってどのような可能性を持っているのかということです。
人は実際にその場所に立ち、過ごしてみることで初めて気づくことがあります。
風の通り方。
空の広さ。
子どもが走りたくなる距離感。
誰かと自然に会話が生まれる居場所。
図面やアンケートだけでは見えてこない価値が、そこにはあります。
だから私たちは、まず「公園について考える」のではなく、「この場所で過ごしてみる」ことから始めました。


市民参加の場では、「どんな公園が欲しいですか?」という問いが投げかけられることがあります。
もちろん、それは大切な問いです。
遊具が欲しい。ボール遊びがしたい。静かに過ごせる場所が欲しい。地域の人たちが感じているニーズを知ることは、公園づくりに欠かせません。
しかし私たちは、その問いだけでは見えてこないものがあると考えています。
なぜなら、人は必ずしも「本当に欲しいもの」を最初から言葉にできるわけではないからです。
例えば、「ベンチが欲しい」という声があったとしても、その背景には「散歩の途中で一息つける場所が欲しい」という思いがあるかもしれません。
「遊具が欲しい」という声の背景には、「子どもたちが安心して集まれる居場所が欲しい」という願いがあるかもしれません。
私たちが知りたいのは、設備や機能そのものではなく、その先にある過ごし方や体験です。
だからこそ、近隣公園プロジェクトでは、まず人々がその場所で過ごしてみる機会をつくりました。
実際にその場所に立ち、人と出会い、時間を過ごす中で、「ここで何ができそうか」「どんな時間を過ごしたいか」という感覚が少しずつ立ち上がってきます。
市民参加とは、意見を集めることだけではありません。
私たちは、市民参加を「地域の未来を一緒に考えるための対話のプロセス」だと捉えています。
そのためには、設計図を前に議論する前に、まず人と場所が出会う機会をつくることが大切だと考えています。
近隣公園プロジェクトでは、全4回のワークショップを実施しました。
私たちは、最初から公園の図面を広げて議論することはしませんでした。
代わりに、「自然体験」「過ごし方」「にぎわい」といったテーマから対話を始め、最後に公園の計画へとつなげていきました。
それは、市民参加を単なる意見収集の場ではなく、人と人、人と場所の関係性を育むプロセスとして捉えているからです。
例えば、「どんな遊具が欲しいか」という問いから始めると、議論は設備や機能の話になりがちです。
しかし、「この場所でどんな時間を過ごしたいか」という問いから始めると、その背景にある価値観や想いが見えてきます。
子どもと自然の中で過ごしたい。
地域の人とゆるやかにつながりたい。
何もしない時間を楽しみたい。
そうした対話を重ねることで、公園に求められているものは単なる設備ではなく、「どんな体験を生み出したいか」であることが見えてきます。
私たちは、こうした対話の積み重ねを通じて、市民参加のプロセスそのものをデザインしています。
良いアイデアは、突然生まれるものではありません。
異なる立場の人々が出会い、対話し、共に考える時間の中から育まれていくものだと考えています。


近隣公園プロジェクトを通じて私たちが目指していたのは、公園の計画をつくることだけではありませんでした。
もうひとつ大切にしていたのは、このプロジェクトに関わる人たちが、地域の未来を共に考える当事者になっていくことです。
市民参加の場では、参加者が「意見を言う人」として関わることがあります。
もちろん、それも大切な役割です。
しかし私たちは、その先にある可能性を信じています。
対話を重ねる中で地域への理解が深まり、他の参加者との関係性が生まれ、自分自身もこのまちの一員として関わっていく。
そうした経験の積み重ねが、地域の未来を支える担い手を育てていくのだと思います。
実際に近隣公園プロジェクトでも、回を重ねるごとに参加者同士の会話が増え、新しい視点やアイデアが共有されるようになりました。
そこには、「利用者」としてではなく、「共につくる人」として関わろうとする姿勢が少しずつ育っていたように感じます。
私たちは、こうした変化こそが市民参加の大きな価値のひとつだと考えています。
公園は完成すれば終わりではありません。
むしろ、その場所を使い続け、育て続ける人たちがいてこそ、地域に根付いた公園になっていきます。
だからこそ私たちは、空間をつくるだけでなく、その空間を支える関係性や担い手を育むプロセスも同時にデザインしていきたいと考えています。

公園が完成したらやりたいことが詰まった「にぎわいカード」。
良い公園は、良い設計図から生まれるとは限りません。
もちろん、空間のデザインは重要です。しかし、その場所でどんな時間を過ごしたいのか、どのような関係性を育みたいのかが共有されていなければ、本当に愛される公園にはならないのではないでしょうか。
柏の葉・近隣公園プロジェクトでは、公園の計画を考える前に、まずその場所で過ごしてみることから始めました。
そのプロセスを通じて見えてきたのは、設備や機能への要望だけではなく、人々がこの場所に期待する体験や関係性でした。
私たちは、市民参加とは意見を集めるための手法ではなく、地域の未来を共に考え、共につくるためのプロセスだと考えています。
これからも、みんなのまちづくりスタジオを通じて、人と人、人と場所が出会い、新しいアクションが生まれる場をデザインしていきたいと思います。
※本プロジェクトの詳細レポートは、UDCK 柏の葉アーバンデザインセンターみんなのまちづくりスタジオのウェブサイトで公開しています。
※ワークショップ参加者の発言内容、成果物(ワークシートや模造紙など)はみんスタONLINEで公開しています。
この記事でご紹介したように、私たちは対話と共創を通じて、多様な主体が関わり続けられる場とプロセスを設計しています。
地域づくりや組織づくりに関するご相談がありましたら、お気軽にお問い合わせください。
その他の記事 / Behind the Practice
